日曜日, 5月 01, 2005

hop step slip

4/28(木)
武者利光さんの話を聞きにすずかけキャンパスへ。
とてもおもしろい講演だった。

EEGで10コの電極からデータをとる。2個の電極間の相関を計算すると45個の組み合わせがあり、さらに3つの周波数帯でわけると135個の相関係数がでてくる。その135個のデータに135×4のマトリックスをかけてストレス・喜び・リラックス・落ち込みを表す4つの指標に線形変換できることを発見したらしい。

普通の人に好きな音楽を聴かすと、ストレスはほぼ一定の値をとって遷移し、喜びと落ち込みはお互いにシーソーのようにゼロサムの関係を保って時間遷移する。音楽を聴いているとき感情は喜びと悲しみの間を揺らいでいる・・ようだ。

おもしろいと思ったのは、自閉症の子供がなにかにはまっているときの感情を測定すると、ストレスと喜びが一定の値をフラットに保ったまま時間遷移するらしい。自閉症の子供がなにかに集中しているとき、脳の中は喜びに満ちている!!ことが示唆される。

 武者さんは値がフリーズすると表現されていた。感情がある相でフリーズするということ。日常会話をしているとき、ノーマルなヒトはつねに相手の心をマインド・リーディングしている。そのときもし例えば怒りの感情で心が一杯だったら、相手の言動をすべて怒りという色眼鏡を通して理解してしまうおそれがある。相手の気持ちを読むためには自分の情動はひとつの相にフリーズしていてはだめで、オープンでなくてはならない。そして、相手の感情に動的に適応するためには、自分の情動はつねに揺らいでいるほうが都合がいいのかもしれない。

そのほかにも認知症の早期診断のはなしもおもしろかった。脳波の分布の形から正常と認知症の区別ができることを発見したらしい。正常のヒトの頭のα・β波の空間分布の等高線の曲線はなめらかなのだけれど、認知症のヒトはあちこちでカクカクになっている。でも、アートセラピーをさせるとそれが2時間しかしてないもかかわらず正常の脳波にもどるらしい!でも一週間すると元のカクカクにもどってしまうらしい。脳のダイナミクスと可塑性の関係についていろいろ考えさせれられるデータであるなと思う。

4/29(金)
いとこの家族がきて恒例の家族テニスの日。一年ぶりにテニスをした。ちょっとうまくなっていた。運動記憶、おそるべし。

り三に通っているいとこはいま解剖の授業があるらしい。壁に耳をつけて、「壁に耳あり」事件は本当にあったらしい・・。「障子に目あり」が起きなくてよかった・・。脂肪よりも神経繊維って強度があるので、組織を引っ張ると脂肪だけがちぎれて、神経繊維をとりだすことができるとか、まだ顔をみてないけれどももし顔をみてしまったらきっと解剖できなくなると思うとか、いろいろリアルな話を聞かせてくれた。

4/30(土)
ここ2日、論文執筆を中断して、ジェフ・ホーキンスの「考える脳、考えるコンピューター」を読んでいた。とてもおもしろかった。自発発火の研究から、脳の活動にウチもソトもないことは明らかだ。視覚野ですら外部入力がなくとも自発的に活動をしている。そこから示唆されることは脳のなかには外界を取り込んだなんらかの内部モデルがあるということなのだけれども、ではその内部モデルって何?というのがずっと問題になっている。ひとつの流れとして認知とは外界の入力と内部の予測のマッチングであるという仮説があって、複雑系のヒトのリカレントネットワークモデルとか、ベイジアン・ネットワークとか、いろいろ理論が提案されてきたのだけれど、脳は本当にそんなことやってるの?という疑問がずっとある。ホーキンスは神経生理学に基づいた枠組みを提唱した。そこがこの本のえらいところだと思う。「現象学的意識」はこれではだめだと思うが、大きな枠組みを提案していておもしろい。それでいけるところまでいってみればいいのだと思う。

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