木曜日, 1月 05, 2006

脳・直感・決断力

羽生さんの「決断力」を読んだ。
天才がその内観をありのままに語る本は
とてもおもしろいと思う。

小林秀雄の「モーツァルト」で、モーツァルトが自分の
曲をおもいつくときの内観を書いた手紙のことについて
書いてあって、普通の人ではありえない驚異的な
脳の使い方をしていることがよくわかるんだけれど、

それに匹敵するぐらいおもしろいと思う。

ノーマルな脳が天才の域に達している状態が
いったいどいう状態なのか?というのが
なんとなくわかったきがする。

サヴァン症候群の人で、数桁の数字が素数かどうか
を瞬時に判断できる能力をもっているひとがいて、
サヴァンの人は、内観を言葉で報告できないから、
一体どんな計算をしているのか謎だったんだけれど、
このまえNHKでBBCの「ブレインマン」という番組が放送されていて、
ほんのわずかだけれども、言語が正常でかつサヴァン的な能力をもっている
人がいるらしくて、その人の内観を調べると、
どうも、それぞれの数字に対して特有な感覚質をともなってイメージを
頭のなかに持っていて、そのイメージたちが勝手に相互作用しているうちに
計算がすすんでいて、最後に答えの数字だけ浮かんでくるらしい。

サヴァン症候群の人の驚異的な計算能力は、概念というよりは、
感覚質をともなった実体が、勝手に計算してくれるらしい。

おそらくサヴァンの人の脳の構造と使い方は、ノーマルな人とは違う。

健常者の人が計算するときは、概念をつかわなくてはいけなくて、
そういった概念でする計算は、ワーキングメモリーのキャパシティに
拘束されていて、直列的でたかがしれているんだけれど、
長い間、ある脳の使い方をしつづけると、直感がはたらくようになる。

それは、計算のショートカットともいえるし、膨大なパラメータ空間の
なかから瞬時に本質だけを把握できる能力だともいえる。

直感とは、あることに対して、高いモチベーションをもって、
ずっとインプットしつづけ、ずっと考え、ずっと体系化しようという
志向性をもった脳ならば、必ず現れる、脳の自然な機能なのでは
ないかと思い至る。

そういった脳の使い方を将棋という枠組みのなかで極めた人が羽生さん
なのではないかと思った。

そして、一番グッときたのがここ。

私は、どうなるかわからない混沌とした状況こそ、将棋の持っている面白さ、醍醐味の一つだと思っている。そこには、発見があり、何かを理解することができ、何か得るものがある。ものすごくやりがいがある。それは、私自身がこれまで面白いと感じ続けてきたところであり、これからもその気持ちを大事にしてそういう面白さを発見し続けたい。

混沌のなかから、自然の真理を発見したいと願う科学者の心と
すごいシンクロするところがあって、すごいいい言葉だなぁと思ふ。

0 件のコメント: