金曜日, 3月 24, 2006

眼の誕生

最近、生物の進化と脳の創造性の関係について考えていて、
これらは、例えるならば、3つの基本要素しかないところから、
4つめ、5つめの「なにか」をひきだすことができる、
というところが共通している。

そんな気分で、進化に興味をもって
アンドリュー・パーカーの「眼の誕生」を読んだ。

今から5億4300万前、今いる動物の主要なグループがいっせいに
硬い殻を進化させ、それぞれが特有の形態をもつようになる。
それをカンブリア紀の進化の爆発というのだけれど、

この本は、それが、実は生物が眼を進化させたことによって、食う者と食われる者の
軍拡競争が突然おきて、その結果として、大進化が誘発されたのではでないか?
という仮説を様々な分野のデータを積み重ねて検証している。

その仮説を思いつくまでのいきさつがとても面白くて、
もともとは、貝虫の研究をしていて、貝虫の触子みたいなのに回折格子があって
光があたるとキラッと光ることをはじめて見つけて、それを発表したら、
世界中で回折格子が、この生物にもあった、あの生物にもあったという
発表が現れたという話とか、

それで、たまたま博物館で、カンブリア紀の生物の想像図の線画をみていたら、
生物の表面に描かれた線が回折格子に見えてきて、化石を電子顕微鏡でしらべたら、
回折格子の痕跡が見つかって、古代の生物の表面が七色に光っていたことが分かったとか、

そして、それがきっかけで、カンブリア紀の生き物と光の関係を考え初めて、
眼の進化と、カンブリア紀の進化の爆発が同時におきたのではないか?
という仮説を思いついたらしい。

セレンディピィティのエッセンスがあふれている本。

回折格子とカンブリア紀の化石という全然関係なかったものが
交差したときに、斬新な仮説が生まれたというところが、
とてもおもしろいと思う。

サイエンスにおける仮説の検証というのは、ある種、推理小説に似ていて、
さまざまなデータを積み重ねていくと、最後に、それらの点がすべてつながって
線となり、ひとつの結論が導かれる。

たとえば、意識はスモールワールドネットワークに宿る、という仮説を
思いついたとしても、それを検証することは、今のところパズルのピースが
欠けまくっていて、ほとんど不可能に近い。

だから、眼の進化とカンブリア紀の大進化をつなげているこの本の思考プロセスは
とてもエキサイティングで、よくピースがそろったなぁと思う。
サイエンスをする楽しさはここにあり!という気持ちを新たにできて、
とても勉強になった!

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